退学から再入学試験受験まで

長らく居座った大学を自主退学し、とうとう高校卒業当時の身分に戻って再入学試験を受験するまで3ヶ月もなかった。

 

世間はクリスマス、年末年始と慌ただしくどことなくキラキラした季節。
自分と自分の周囲はその慌ただしさとは大分色合いの違う空気が流れていた。

 

再入学試験について色々と説明を受けたがこの身分のまま入学を夢見て勉強を何年も続けることなど過去様々な試験という試験を経験してきた自分でさえ想像を絶する熾烈なものになるから絶対に避けなければならない状況だと認識していた。

 

やはり過去問も存在しない第1回の試験とは言っても大学の試験、卒業試験を参考にしないわけは無いだろうから卒業試験、特に最後に受けた卒業試験をとくに厚く演習することにした。

全く試験問題、出題傾向が分からない試験のために勉強したこの期間、過去問のある試験がいかにありがたいものなのか再認識した。

時期的に医師国家試験も直前期で国試向けの講座もすでに取っていたので全ての知識の総まとめとしてmedu4の国試究極MAPを受講して知識の抜けをチェックすることにした。

 

究極MAPは診療科毎に1ページ使い、国試の過去出題され必要だった知識を網羅的にまとめたもので一見するとただ小さな文字がびっしり詰まった情報量の多いテキストなのだが、計算されて配置され1ページ上で完結しているため疾患毎の関係も一目瞭然で、まさに名前通り俯瞰してみる街の地図のようだった。

掲載されコマ数も動画視聴期間も短いのでお祈り程度なのかなぁとそこまで期待してなかったのだけどこれが自分にとって知識を整理していく基盤になっていくとはその時想像もしてなかった。

 

トマト、パプリカ、ピーマン、いちごの勉強をしたとする。

それぞれの産地や栽培に適した気温、気候、味の特徴を調べて完璧に暗記して勉強完了とするだろう。

4品なら混同しないし多少知識が飛んだ頃思い出しても対応できるかもしれない。

これが10、いや100、もっと500に増えたら。。。。パプリカとピーマンを混同するどころかトマトといちごの内容をごちゃ混ぜにしてもおかしくない状況も想像に容易い。

なるべく混同するリスクを軽減させるためにもグルーピングがとても有効になる。

MAPは知識の羅列になりがちな頭の中をまず食べ物というグループの中にトマト、パプリカ、ピーマン、いちごがあり、全て野菜。パプリカとピーマンの違いは・・・・のように整理の手助けをしてくれた。

整理されているとじゃあ野菜とくだものの違いは何だろうとかこれまで思いもしなかった、見たこともない切り口の違う出題に対しても冷静に対処できる(かもしれない)

 

国試直前講習を大学入学のために使い試験まで淡々と勉強する日々だった。

近所の市立図書館で高校生が赤本を広げ勉強しているのを見て、これまで必死にやってきたけど自分も彼らと何ら変わらない状況なんだよなぁ、と感傷に浸ることもあったけど、ただ淡々と続けた。

 

試験当日、快晴。

とりあえず全てぶつけられた、そう思えるくらいに出し切った。

問題は残念ながら手抜きも温情もない、ピカピカの新作問題でどちらかというと難化しているようにも思えた。

試験が終わった瞬間、手応えとかそういうもの以上の、やりきってやったという達成感を強く感じたのを今でも覚えている。

 

結果は合格。4月から大学生に戻れることが決定した。

 

合格発表は掲示され発表されたがそこには自分の番号しかなく、大学の冷酷さをここでも実感した